名刺には2000年の歴史が?日本と世界のはじまり~現在までを解説
「名刺っていつから使われているの?」
そのようなご質問にお答えします。
本記事の内容
・名刺の起源は中国
・名刺の歴史|日本と世界
・名刺の現在から今後
社会人であれば、名刺交換のマナーを知っている方は多いと思いますが、名刺の歴史についてはご存じでしょうか?
日々何気なく使っている名刺も、歴史まで知っている方は少ないかもしれません。
そこで本記事では、名刺の歴史について、はじまりから現在、今後に至るまでを詳しく見てみたいと思います。
名刺交換マナーと合わせて、名刺の歴史についても知ってみてください。
名刺の起源は中国
現在、日本を中心にビジネスシーンで多く活用されている名刺ですが、はじまりは紀元前2世紀頃の中国といわれています。
諸説ありますが、漢の初代皇帝である劉邦が結婚する際、妻になる女性の父親に対して自己紹介をするために渡したという説が有力です。
他にも、訪問先が不在だった場合に、自分が訪問したことを伝えるために用いていたなど、今でいう不在票のような使われ方をしていたという説もあります。
紙ではなく「刺」を使用していた
当時は紙がなかったため、木や竹に自分の名前などを掘った「刺」が使用されていたそうです。
刺を使っていたという記述は実際に残されており、1984年中国安徽省馬鞍山にある三国時代の呉の武将「朱然」の墓からは本人の名刺が出土されています。
朱然の名刺は、竹を割って文字を書けるようにした竹簡というものを使って作られており、発見された名刺の中では最も古い現物といわれています。
刺は地位の高い人を中心に広がりをみせ、いつの頃からか「名刺」と呼ばれるようになりました。
現在でも名刺の漢字に紙ではなく「刺」が使われているのは、発祥当時に使用していた木や竹などの刺に由来しています。
名刺の歴史|日本
中国で広まった名刺ですが、日本ではいつ頃から使われはじめたのでしょうか。
ここでは、日本での名刺の歴史を見てみましょう。
日本で名刺が使われはじめたのは江戸時代
日本で名刺が使われはじめたのは、19世紀初頭の江戸時代の頃といわれています。
当時は、和紙に墨を使って名前を書き、不在の訪問先に自分が訪問したことを伝えるための不在票として使用されていました。
江戸時代の末頃になると、西洋から伝わった印刷技術により印刷した名刺が使われるようになり、名前だけでなく家紋も記されていたそうです。
主に、来日した外国人との交流を深めるために名刺を使用していたといわれており、外国人との名刺交換が記録にも残されています。
明治時代以降は社交界の必需品に
江戸時代から広がった名刺も、明治時代以降は上流階級を中心に社交界で欠かせないアイテムとして親しまれるようになりました。
現在と同じような身分証明書としての役割が確立したのは、昭和のことです。
表記内容は現在とほとんど変わらず、黒一色で印刷されたシンプルなものが主流でした。
ビジネスシーンの必須アイテムに
高度成長期の後半頃になると、フルカラーの名刺が作られるようになり、凸版印刷やオフセット印刷もはじまりました。
会社のロゴマークや写真などがフルカラーで印刷された名刺は、現在のものとほとんど変わらないデザインで、ビジネスシーンの必須アイテムになっていったようです。
名刺の歴史|世界
日本で名刺が使われはじめたのは19世紀初頭ですが、他の国はどうでしょうか。
ここでは、名刺のはじまりである中国とヨーロッパ、アメリカの歴史について国ごとに見てみましょう。
中国での名刺の歴史
紀元前2世紀頃に木や竹の刺を使いはじめた中国では、7世紀頃から紙が普及しはじめたことで、紙の名刺を作るようになりました。
紙の名刺は「名帖(ピンイン)」と呼ばれ、訪問先が不在のときの不在票だけでなく、地位の高い人との取り次ぎや、会議に参加できないときの挨拶代わりに使われていたようです。
官僚社会である中国において名帖は欠かせないものになり、唐の時代の書物にも記載されています。
現在、中国では上級管理職や貿易ビジネスなどを行う人中心に名刺が使われており、「名片(ミンピェン)」と呼ばれています。
ヨーロッパでの名刺の歴史
ヨーロッパで名刺が使われはじめたのは、16世紀頃のドイツと言われています。
当時の使い方は中国と同様、訪問先の不在時に自分の名前を書いたカードを置いて訪問を知らせるものでした。
17~18世紀頃には社交界で使われるようになり、貴族の必須アイテムとして流行していたそうです。
今のようにシンプルな名刺ではなく、トランプの裏側に名前を書いたものや、華やかなデザインのものが好まれていました。
また、現在のマナーとは少し異なるものの、使い方や約束事などが定められていたそうです。
19世紀頃からは、フランスの写真家が考案した写真入り名刺も使われはじめ、今の名刺の元となるサイズ規定などが決められました。
現在、ヨーロッパでも名刺は使われていますが、国ごとに使い方は少し異なります。
ドイツ:仕事相手が外国人の場合に使用
イギリス:社長などの役職の人が集まるパーティーで使用
フランス:付き合いの長くなる人に対し管理職以上の人が使用
日本のようにビジネスシーンで必ず使用するものではなく、相手の地位などに合わせて使い分けられているのが特徴です。
アメリカでの名刺の歴史
アメリカで名刺が使われはじめたのは、日本より少し前の18世紀頃からです。
当時、ステータスとして名刺をもつ資産家が増え、社交のために使われていました。
現在はビジネスシーンにおいても使用されていますが、基本的にメールでやり取りすることが多いので、名刺を持っていない人もいます。
名刺を持っていたとしても、自己紹介の意味合いではなく会社の宣伝ツールのような役割で使用されることが多いです。
また、日本のように打ち合わせの初めに交換するのではなく、最後に名刺を交換するのが一般的です。
名刺の現在から今後
現在、名刺はビジネスシーンを中心に世界のさまざまな場面で使用されています。
とくに、日本は世界一の名刺消費国といわれているほど名刺が欠かせない存在になっており、1日に約3,000万枚、年間にすると約100億枚もの名刺を使用しているそうです。
ほとんどの用紙が樹木を伐採して作られているため、今後は使用する用紙の見直しをしなければいけません。
また、コロナ禍のリモートワークをきっかけに注目されはじめた、オンライン名刺交換も合わせて活用する必要があります。
インターネットなどを介して気軽に名刺を作成できるようになった今、ビジネスシーン以外でも名刺をもつ人が増えると予想されているため、デザインだけでなく環境に配慮したエコ素材の活用が求められるでしょう。
まとめ
本記事では、名刺の歴史について、はじまりから現在、今後をご紹介しました。
日々何気なく使用している名刺には長い歴史があります。
大昔の人々から受け継がれてきた名刺を今一度大切にし、現代に合わせた内容へと見直しが必要です。
ぜひ、エコ素材などを活用して、あなただけの1枚を作成してください。